多くのインバウンド客にとって、日本での滞在は特別な体験です。その体験を最高の思い出にするため、宿泊先であるホテルの果たす役割は非常に重要です。
しかし、「具体的に何から始めればいいかわからない」と悩んでいるホテル経営者や担当者も多いでしょう。
この記事では、ホテルがインバウンド客を集客するための戦略を10個解説します。また、インバウンド客が日本のホテルに抱く「本音」についても紹介しています。
「インバウンド対策を始めたいけど、何から手をつければいい?」と考えているホテル関係者の方は、ぜひ参考にしてください。
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インバウンドの「今」を知る
ホテルが実施するべきインバウンド対策を紹介する前に、まずはインバウンドの現状について解説します。
インバウンド市場は自動車に次ぐ規模
コロナ禍を経て、インバウンド市場は記録的な回復を遂げています。2024年の訪日外国人数は、過去最高だった2019年を大きく上回る3,687万人に達し、消費額も8.1兆円と過去最高を記録しました。
この8.1兆円という数字の経済的なインパクトは非常に大きく、これは日本の輸出産業において自動車に次ぐ第2位の規模に相当します。
つまり、インバウンド市場は単なる観光ブームではなく、日本経済を支える重要な柱へと成長したのです。
国が掲げる2030年の目標「6,000万人・15兆円」からも、インバウンド市場が今後も成長し続けることは確実で、ホテル経営にとってこれ以上ない追い風と言えるでしょう。
<参照>日本政府観光局(JNTO):訪日外客統計
消費額のうち「宿泊費」が33.6%とトップ
観光庁の調査によると、訪日外国人旅行消費額を項目別に見たとき、「宿泊費」が全体の33.6%を占め、最も大きな割合となっています。
次いで買い物代が29.5%、飲食費が21.5%、交通費が10.7%、娯楽・サービス費が4.7%となっています。このデータからも、ホテルがインバウンド対策に力を入れることが、いかに収益に直結するかがわかるでしょう。
宿泊費は、ホテルの安定した経営基盤を築く上で最も重要な収益源です。
インバウンド客の多くは、日本の文化や体験を求めて地方都市にも足を延ばすため、都市部のホテルだけでなく、地方のホテルにとってもインバウンド需要は大きなビジネスチャンスと言えるでしょう。
<参照>観光庁:訪日外国人の消費動向(2024年)
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ホテルがインバウンド集客をするメリット
インバウンド対策は、ホテルの経営を安定させ、さらなる成長を促すための重要な戦略です。
ここでは、ホテルがインバウンド集客をする4つのメリットを紹介します。
売上と収益の拡大
インバウンド集客を行うことで、客単価の向上と新規顧客の獲得が可能になります。
インバウンド客は、国内旅行者と比較して滞在期間が長く、宿泊費や食事、アクティビティにかける費用が多い傾向にあります。
特に円安の状況下では、より高価なプランやサービスが選ばれやすく、客室以外の収益(レストラン、バー、スパなど)も増加が期待でき、ホテル全体の売上と収益が大きく向上します。
また、少子高齢化で縮小が懸念される国内市場に依存せず、新たな客層を開拓することで、通年で安定した稼働率を維持できるのもホテルがインバウンド集客をするメリットの一つと言えるでしょう。
ブランドイメージと競争力の向上
満足度の高い宿泊体験は、SNSや海外の口コミサイトを通じて世界中に拡散されます。これは、ホテルの認知度を飛躍的に高め、強力なブランドイメージを築く絶好の機会です。
多言語対応や文化に合わせたサービスなど、独自の対策を講じることで、競合との差別化が図られ、旅行者にとって「選ばれるホテル」へと成長できます。
地域経済への貢献
ホテルが地域の観光情報や特産品を積極的に紹介することは、インバウンド客の消費を周辺の飲食店や観光地へ促し、地域全体の活性化に貢献します。
インバウンド需要の増加は、ホテルや関連サービス業における雇用の創出にもつながるでしょう。
サービスの質的向上
多様な文化背景を持つ宿泊客を受け入れることは、スタッフの多文化理解を深め、より質の高いホスピタリティを提供するための貴重な経験となります。
また、多言語対応のチェックインシステムやキャッシュレス決済を導入すると、インバウンド客だけでなく、国内の利用者にとっても利便性が向上します。
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ホテルがインバウンド対策をするうえで知っておくべきこと
インバウンド集客はホテルの経営を大きく成長させるチャンスですが、成功のためにはいくつかの課題を乗り越える必要があります。
ここでは、インバウンド集客を始める前に知っておくべき4つのポイントをご紹介します。
コストと時間がかかる
多言語対応のウェブサイトや予約システムの導入、キャッシュレス決済端末の整備、外国語が話せるスタッフの確保などには、初期投資と継続的な運用コストがかかります。
また、これらの対策の効果が目に見える形で現れるまでには時間がかかることを理解しておく必要があります。
人材確保と文化の違いへの配慮が必要
インバウンド客との言語の壁を乗り越えるため、多言語対応スタッフの確保や翻訳ツールの導入が必須となります。
さらに、国や地域によって異なる文化、習慣、宗教への配慮も重要です。食事制限やマナーなど、多様なニーズに応えるための知識と柔軟な対応が求められます。
設備や情報提供のギャップ
日本のホテルは清潔ですが、インバウンド客からは客室やベッドのサイズが狭いといった声が聞かれることもあります。
また、予約サイトやウェブサイトの情報が外国人にとって分かりにくい場合があるため、正確で明確な多言語表記が不可欠です。
地域社会への影響(オーバーツーリズム)
特定の観光地やホテルにインバウンド客が集中することで、オーバーツーリズム(観光公害)が発生する可能性があります。騒音やゴミの問題、交通渋滞などが生じ、地域住民の生活に影響を与えることも考慮に入れる必要があります。
これらの課題を乗り越えるためには、事前の綿密な計画と、継続的な改善が不可欠です。インバウンド対策を単なる集客策ではなく、ホテル全体のサービス品質向上と経営体制の強化の機会として捉えることが大切です。
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【集客編】ホテルのインバウンド対策4選
ホテルがインバウンド集客として行うべきことは多岐にわたりますが、大きく分けて「集客」と「受け入れ体制の整備」の2つの側面から考えることができます。
まずは、インバウンド集客するための対策を4つ紹介します。
MEO対策の実施
MEO対策もホテルがインバウンド集客を実施するうえで重要な施策の一つです。MEOとは、Map Engine Optimization(マップエンジン最適化)の略で、「ローカルSEO」とも呼ばれます。
一般的には、GoogleマップやGoogle検索において「上位に表示されるための施策」のことを「MEO対策」と呼ぶことが多くなっています。なお、MEO対策にはGoogleのツール「Googleビジネスプロフィール」を活用します。
Googleビジネスプロフィールを充実させ、写真や基本情報を多言語で正確に掲載します。MEO対策の具体的な方法については、「MEO対策とは?自分でできる施策やメリット・デメリットを徹底解説」の記事で紹介しています。あわせてご覧ください。
多言語対応のウェブサイトと予約システムの整備
英語はもちろん、中国語(簡体字・繁体字)、韓国語、タイ語など、主要な顧客層の言語に対応した公式ウェブサイトは必須です。
ホテルの魅力が伝わる写真や動画を豊富に掲載し、スムーズに予約できるオンラインシステムを導入しましょう。
その上で、外国人観光客が実際に宿泊先を探す際に利用するGoogleマップや、海外の主要な口コミ・予約サイトでも、常に正確で最新の情報を届けることが集客の鍵となります。
しかし、これら複数のプラットフォームの情報を一つひとつ多言語で管理・更新しようとなると、それなりの手間と時間がかかります。「口コミコム」の店舗検索サービスなら、自社サイトも含め、国内外の主要なサイトの店舗情報を一つの管理画面から一括で更新・発信できます。
これにより、情報管理の負担を大幅に削減し、インバウンド集客を効率的に実施できるでしょう。
海外OTA(オンライン旅行代理店)の活用
Booking.comやExpedia、Agoda、Ctripといった海外で利用者の多いOTAへの登録は、インバウンド集客するうえで基本の施策の一つです。
これらのプラットフォームに施設を登録し、世界中の旅行者にホテルをアピールしましょう。
SNSを活用した情報発信
InstagramやFacebook、TikTokなどを活用し、ホテルの魅力を写真や動画で視覚的に訴えかけましょう。
なお、国によって使用するSNSは異なり、たとえば中国ではX(旧Twitter)やFacebook、Instagramは使用できず、RED(小紅書)やWeiboなど独自のSNSで情報収集しています。
ターゲットに合ったプラットフォームで適切に情報を届けるようにしましょう。
国・地域 | 外国旅行の情報収集をする際に使うSNS |
---|---|
中国 | TikTok(抖音)、Weibo(微博)、RED(小紅書) |
韓国 | NAVER、Instagram、Facebook、X(旧Twitter) |
台湾 | Facebook、Instagram |
香港 | Facebook、Instagram、Like Japan |
アメリカ | Facebook、Instagram、X(旧Twitter) |
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【受け入れ体制の整備編】ホテルのインバウンド集客6選
インバウンド客が快適に安心して滞在するためには、受け入れ体制の整備も不可欠です。
ここでは、ホテルがインバウンド集客を実施するために必要な受け入れ体制の整備を6つ解説します。
多言語対応
インバウンド客とのコミュニケーションは、ホテルサービス全体の満足度に直結します。基本的な英語はもちろん、中国語や韓国語など、主要な顧客層の言語を話せるスタッフを配置するのが理想的です。
難しい場合は、タブレット型の自動翻訳ツールや、スマートフォンの翻訳アプリを活用することで、円滑なコミュニケーションを図れます。
また、スタッフ向けの外国人対応研修も効果的です。文化やマナーの違いを学び、スムーズで丁寧な接客ができれば、コミュニケーションミスやトラブルを防げます。
外国人対応に慣れたスタッフがいることは、ホテルの信頼性を高め、リピーター獲得や良い口コミによる集客にもつながります。
さらに、館内の案内表示、パンフレット、メニュー、客室内の案内を多言語化しましょう。特に、非常口や避難経路の表示は、万が一の事態に備えて必ず多言語で分かりやすく示しておくことが重要です。
キャッシュレス決済の多様化
現金を持たないキャッシュレス文化が浸透している国が増えています。クレジットカードだけでなく、AlipayやWeChat PayなどのQRコード決済、Apple PayやGoogle Payなどの電子マネーにも対応しましょう。
宿泊客は両替の手間や手数料を気にすることなく、スムーズに支払いを済ませられます。また、レジでの現金の受け渡しが減るため、会計処理も迅速になり、スタッフの負担軽減にもつながります。
Wi-Fi環境の徹底整備
インバウンド客にとって、SNSでの情報発信や、Googleマップを使った道案内、観光情報の検索など、高速で安定したWi-Fi環境は必須条件です。ホテル内のWi-Fiが遅かったり、場所によってつながらなかったりすると、大きな不満につながります。
客室内だけでなく、ロビーやレストランなど館内全体で無料で利用できる環境を整備することで、SNSでの情報発信や情報収集がスムーズに行え、宿泊客の満足度が高まるでしょう。
文化・宗教・習慣への配慮
インバウンド客の国や地域によって、文化や宗教上の習慣は異なります。
たとえば、ベジタリアン、ハラル、グルテンフリーなど、特定の食事制限を持つ旅行者に対応できるよう、レストランのメニューに専用の表示を設けたり、別メニューを用意したりしましょう。
また、イスラム教徒の宿泊客向けに、お祈りマットを貸し出したり、メッカの方向を示す「キブラ」の案内をしたりすることも有効です。こうした細やかな配慮によって安心感とホスピタリティを感じてもらい、その結果リピーター獲得につながるはずです。
独自の体験型コンテンツの提供
ホテルに滞在するインバウンド客は、単に寝泊まりするだけでなく、日本ならではの特別な体験を求めています。
ホテル内で着物体験や茶道体験、和食作り体験などを提供したり、近隣の体験施設と連携したりすることで、宿泊客に特別な思い出を提供し、滞在価値を高めることができます。SNSでの「映える」体験は、新たな集客にもつながるでしょう。
宅配・荷物預かりサービスの充実
インバウンド客は訪日中に大きな荷物を持って移動することが多いため、空港への荷物配送サービス(手ぶら観光)や、チェックイン前・チェックアウト後の荷物預かりサービスは、非常に便利です。
これらのサービスを多言語で明確に案内することで、移動の負担を軽減し、利便性を大幅に向上させることができます。
また、事前に荷物を預かることで、宿泊客がホテル到着後すぐに観光に出かけられるようになり、ホテルの利用価値が高まります。
<参照>
株式会社スーパーホテル:湯元「花乃井」スーパーホテル大阪天然温泉にてバゲッジキーパーと連携した手荷物当日配送サービス「Airporter」を導入
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ホテルに対するインバウンド客の本音
インバウンド客は、日本のホテルに対して清潔さやサービスに高い評価を抱く一方で、いくつかの不満点や改善を求める点も抱えています。こうした「本音」を理解することは、顧客満足度を向上させ、リピーターを増やすうえで欠かせません。
ここでは、外国人観光客が日本のホテルに感じる主な不満点を3つの視点から解説します。
「客室やベッドが狭い・バスタブが小さい」
日本のホテルはインバウンド客から「清潔で機能的」と高く評価されていますが、外国人観光客、特に欧米からの旅行者からは、客室やベッド、バスタブのサイズ感に対する不満が聞かれることがあります。
日本のビジネスホテルは、効率性を重視した設計のため、客室や浴室がコンパクトに作られているのが一般的です。しかし、体の大きい外国人にとっては、このサイズ感が大きなストレスとなる場合があります。
例えば、荷物を広げるスペースが足りなかったり、シャワーを浴びる際に体が壁に当たったり、ベッドの長さが足りず足がはみ出てしまったり。また、バスタブが小さく、肩までしっかり浸かれないことに驚く声も聞かれます。
こうした不満は、単なる好みの問題ではなく、快適な滞在を妨げる要因となり、結果として「期待と違った」という評価につながる可能性があります。
「多様な文化・習慣への配慮が不足している」
インバウンド客は、国や地域によって異なる多様な文化や宗教観を持っています。そのため、日本のホテルが提供する一般的なサービスが必ずしも彼らのニーズに合致しない場合があります。
この配慮不足は、ゲストに不便や不快感を与え、顧客満足度を大きく下げる要因となります。
特に顕著なのが食事への対応です。ベジタリアン、ビーガン、グルテンフリー、ハラル食など、特定の食事制限を持つ旅行者は年々増加しています。
ホテルがこうした食事の選択肢を用意していなかったり、メニューにアレルギーや食材に関する表示が不十分だったりすると、食事が楽しめず不満につながります。
また、宗教上の習慣への配慮も重要です。イスラム教徒の旅行者にとって、礼拝の方向を示す「キブラ」の案内や、礼拝用のマットが用意されていないことは大きな不満点になりえます。
ほかにも、特定の国ではホテルにスリッパがないことや、日本の入浴文化に慣れていないことなどが、戸惑いや不快感につながることがあります。
このような文化や習慣の違いを理解し、きめ細やかなサービスを提供することは、ゲストに「大切にされている」と感じてもらい、ホテルの評価を上げる上で非常に重要です。
インバウンド客を集客して収益をアップ
今後も拡大が期待されるインバウンド需要。多くのインバウンド客が日本の滞在を楽しみに訪日している今、ホテルにとっては大きなビジネスチャンスであり、インバウンド対策をすることでさらなる集客と収益向上を目指せます。
「口コミコム」を運営する株式会社movは、国内最大級のインバウンドニュースサイト「訪日ラボ」も運営しております。
インバウンドにまつわるデータも大量に保有し、「業界におけるニュースがデータにどのように影響を与えているか?」などの分析を得意としています。インバウンド集客を検討しているホテル事業者様はお気軽にお問い合わせください。
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