「DXの強力なピースは、口コミとMEOだった」 精神論の管理から脱却し、沖縄かりゆしグループが挑む「データ」と「真心」の融合

経営推進本部 戦略企画部 上地(うえち)氏、宿泊料飲部 仲村渠(なかんだかり)氏、宿泊料飲部 予約課 渡眞利(とまり)氏、マーケティング担当 居山(いやま)氏

お話を伺った方:経営推進本部 戦略企画部 上地(うえち)氏、宿泊料飲部 仲村渠(なかんだかり)氏、宿泊料飲部 予約課 渡眞利(とまり)氏、マーケティング担当 居山(いやま)氏

沖縄の観光シーンを長年牽引してきた老舗ホテルチェーン、かりゆしホテルズ。 同社は今、組織のあり方を根本から変えるようなデジタル変革(DX)を破壊的なスピードで推し進めています。その中心にあるのが、2024年に新設された社長直轄の「経営推進本部」です。

「DXは関わるすべての人を幸せにするためのもの」。そう語る戦略チームが、数ある施策の中でなぜ「Googleマップ」と「口コミ」を戦略の要に据えたのか。 今回は、改革の司令塔である経営推進本部 戦略企画部の上地氏、本部と現場の翻訳を担うマーケティング担当の居山氏、そしてエグゼス那覇の最前線で接客と予約を担う宿泊料飲部の仲村渠(なかんだかり)氏、同部 予約課の渡眞利(とまり)氏にインタビューを実施。 伝統あるホテルグループが挑む、「データドリブン経営」の真髄に迫ります。

 

「4.0を切らないように!」張り紙が貼られたバックオフィス

まず、2024年に新設された「経営推進本部」の役割について教えてください。

上地氏(経営推進本部 戦略企画部): 経営推進本部は、文字通り「かりゆしの未来を作る部門」です。 本部の下には、マーケティング推進、DX推進、経営分析という3つのグループが並んでいます。マーケティングが売れる動線を作り、DXが現場を幸せにするための仕組みを整え、経営分析がデータ分析を行う。この三位一体で、グループ全体の意思決定を「感覚」から「データ」へと移行させている最中です。

 

DX化が進む前、現場では口コミをどのように捉えていたのでしょうか?

渡眞利氏(宿泊料飲部 予約課): 正直に申し上げますと、以前はかなりの「精神的圧力」がありました。バックオフィスの目立つ場所に「口コミ点数4.0を切るな!」と大きな張り紙がされていて、まるで昭和の営業拠点のような雰囲気でしたね。

仲村渠氏(宿泊料飲部): でも、どうすれば点数が上がるのかという具体的なロジックは示されていませんでした。悪い口コミが入れば「次は気をつけよう」と反省するものの、その場限りの改善に終わり、結局はいたちごっこ。まさに「根性で頑張る」という世界でした。

上地氏: 現場が疲弊しているのは明らかでした。エージェント(旅行代理店)のキャンペーンに参加するために点数を維持しなければならないという、外的な要因に振り回されていたんです。 私はこの「精神論」を、仕組みで解決しなければならないと強く感じていました。

点と点を線で繋ぐ、DXのミッシングリンク

精神論からの脱却において、どのような戦略を描かれたのでしょうか。

上地氏: お客様の動きを「旅前・旅中・旅後」で区切ったとき、かりゆしは「旅中」の接客力には定評がありました。しかし、旅前にどう見つけられ、旅後にどう繋がるかという動線が、点と点のままバラバラだったのです。 この点と点を線で繋ぐ「全方位のタッチポイントDX」において、Googleマップと口コミ管理こそが、私たちが探していたミッシングリンク(失われた環)でした。

 

数ある管理ツールの中で、「口コミコム」を選定された決め手は何ですか?

上地氏: 理由は大きく2つあります。1つは、「インバウンドに対する圧倒的な知見」です。 現在、エグゼス那覇のお客様の約半数は海外ゲストです。インバウンド集客において、どのルートを通ったとしても最終的に行き着くのはGoogleマップです。そこでの情報の粒度を整え、口コミというユーザー生成コンテンツを最大化させることが、世界中のお客様にリーチする最短距離だと確信しました。

もう1つの理由は、「資産性の高いマーケティング」への転換です。 広告費を投じて集客しても、広告を止めた瞬間に効果は消えてしまいます。しかし、口コミが溜まりマップの評価が上がることは、ホテルにとって永続的な「資産」になります。良い口コミが良い新規客を呼び、その方がまた良い口コミを書いてくれる。この共感のサイクルを回す方が、長期的な費用対効果は圧倒的に高いと判断しました。

AIが創出した「新しい時間」と、解き放たれる真心

実際に導入してみて、現場の負担はどう変わりましたか?

仲村渠氏: 一番驚いたのは「AI返信支援機能」の精度です。 これまでは、どんなに忙しくてもフロント業務の合間に必死に文面を考えていました。そのため返信がどうしても後手後手になり、それがまたお客様の不満を呼ぶという悪循環がありました。今はAIが下書きを作ってくれるので、私たちはそこに「自分たちの言葉」を少し添えるだけで済み、返信時間が劇的に短縮されました。

渡眞利氏: 文面チェックを担当していた私の負担も激減しました。今までは一件一件、誤字脱字やニュアンスを細かく確認していましたが、そのダブルチェックの労力が大幅に省力化されたのは大きいですね。

上地氏: これこそがDXの真髄です。AIが「時間」と「ゆとり」を作ってくれる。その空いた時間で、現場のスタッフが直接お客様と触れ合い、沖縄の真心である「ちむぐくる」を提供できるようになる。DXは人を幸せにするためのものだと言ったのは、まさにこういうことなんです。

仲村渠氏: 本当にそうですね。新しい時間が作れたことで、例えばレンタカーの配車をお待ちのお客様に、もう一言プラスアルファのご案内ができる。心の余裕が、サービスの質に直結していると感じます。

データを共通言語に。現場と本部の融合

本部と現場の連携はどのように進めているのでしょうか。

居山氏(マーケティング担当): 私は現場と本部の「翻訳者」として、精神論を「納得感」に変えることを意識しています。 口コミコムが出してくれる詳細なデータ、例えばワードごとのポジティブ・ネガティブ分析や、他店との比較スコアをそのまま現場にフィードバックしています。「今月は清潔感のワードがポジティブに増えましたね」と具体的に数字で示すと、スタッフの顔つきが変わります。自分たちの頑張りが、ちゃんとデータとして届いていると実感できるんです。

仲村渠氏: これまでは「点数が低いからダメだ」と叱られていただけでしたが、今は「このワードの評価を上げよう」と具体的な目標が見えます。他店との比較ができるのも、適度な刺激になっていて面白いですね。

上地氏: データの活用はさらに深化させています。口コミの傾向から、現場の設備投資の優先順位を判断したり、マーケティングのキャッチコピーを変えたり。現場の肌感覚がデータによって確信に変わり、本部の戦略へと昇華される。そんな良い循環が生まれ始めています。

テクノロジーが守る、沖縄の真心

最後に、今後の展望を教えてください。

上地氏: 今取り組んでいるのは、エグゼス那覇から始まったこの成功体験を、グループ全体へ広げることです。恩納村にあるリゾートホテル群、さらには空港にある「中国料理 花林」のようなレストラン部門まで。実は、空港のレストランこそが最大の新規接点なんです。そこでかりゆしの会員サイトに触れたお客様が、次にエグゼス那覇に泊まってくれる。その滞在体験が素晴らしい口コミになり、さらに世界中から新しいお客様を呼んでくる。グループシナジーをデータで最大化していきたいと考えています。

 

さらにデータを活用していく構想もあると伺いました。

上地氏: はい。そのためには、システム連携の強化も期待しています。APIを使って自社ダッシュボードに口コミデータを取り込み、CRM(顧客管理)のデータと掛け合わせることで、「どのお客様が、どんな体験をして、どんな発信をしてくれたのか」を完全に可視化したいですね。

かりゆしは沖縄で育ったホテルです。私たちが守るべきは効率性だけでなく、お客様、社員、地域社会のすべてが幸福になれる「五方良し」のDXでなければ意味がありません。 口コミコムは単なる管理ツールではなく、現場の情熱をデータという光で照らし、埋もれていた「ちむぐくる」を世界へと解き放つための強力なピースだと確信しています。