「現場任せ」の限界から、自走する組織へ。 10のホテルを束ねる新設部署が挑む、データ起点の品質改革
お話を伺った方:写真左 柿迫 様:リゾーツ琉球株式会社 品質管理部。グループ10ホテルの品質管理および口コミ・アンケート分析を統括
沖縄を中心に、現在10軒のホテルを展開するリゾーツ琉球株式会社。
グループが拡大する中で直面していたのは、「現場任せ」によるサービス品質のバラつきという深刻な課題でした。
この状況を打破し、グループ全体のブランド品質を統一・底上げするために、同社は2024年4月に「品質管理部」を新設。
今回は、同部署でグループ10ホテルの品質管理および口コミ・アンケート分析を統括する柿迫氏にインタビューを実施。
見えなかった現場の課題をデータで可視化し、経営の投資判断やスタッフの意識変革にまで繋げている、同社の泥臭くも確実な改革の歩みを伺いました。
「現場任せ」による品質のブラックボックス化
まず、2024年に「品質管理部」という専門部署が立ち上がった背景を教えてください。
柿迫氏(品質管理部):正直に申し上げますと、品質管理部ができる前は、ホテルの運営において「各施設に完全に任せきり」という状態でした。
口コミの点数管理も、お客様への返信も、指摘された内容への改善アクションも、すべてホテルごとの判断で行っていたんです。
各ホテルの裁量が大きかったのですね。
柿迫氏:ええ。しかし、運営ホテルが増えていくにつれて、会社全体として「どのホテルがしっかりやっていて、どのホテルが放置してしまっているのか」が、本部から全く見えないという深刻な状況に陥ってしまいました。
中には、お客様から1点という厳しい評価や具体的な改善の声をいただいているにもかかわらず、現場が忙しくて返信すらされていない、改善アクションが止まっているというケースもありました。こうした状況を打破し、グループ全体の安心と品質を守るためにミッションを与えられたのが、品質管理部の始まりです。
累計スコアでは見えなかった「現場のリアル」
部署の立ち上げと同時に口コミコムを導入いただきましたが、これまでの管理手法にはどのような限界を感じていたのでしょうか。
柿迫氏:以前も他社の管理サイトを使ってはいたのですが、単に「一括返信ができる」だけのツールにとどまっていました。
私たちが直面していた課題は、各OTAに表示されている「累計の点数」しか見えていなかったことです。1年を通した平均点だけを見ていては、「今月頑張って朝食を改善した」としても、その効果がスコアに反映されているのかどうかが、累計の中にかき消されて見えなかったんです。
変化の兆しをタイムリーに捉えられなかったと。
柿迫氏:はい。口コミコムを導入した決め手は、月ごとに「何点の評価が何件投稿されたか」が瞬時に可視化される点でした。
サイト別、言語別、項目別に分析ができるので、「今月はこのサイトのスコアが落ちている」「インバウンドのお客様の評価が上がっている」といった細かい分析が手作業なしでできる。これが、PDCAを回すために不可欠でした。
データを「改善」に変える。現場を巻き込むプロジェクト
いくらデータが見えても、現場が動かなければ品質は変わりません。どのように社内に浸透させていったのですか?
柿迫氏:実は、1年目はとにかく集計したデータを社内掲示板に流すだけでした。しかし、それだとホテル側からのレスポンスがあったりなかったりで、実効性に欠けていました。
そこで2年目、体制をガラッと変え、各ホテルに「口コミ担当者」を置く『口コミアッププロジェクト』を発足させたんです。
現場の責任者を明確にしたわけですね。
柿迫氏:はい。そのメンバーと毎月1回、必ずやり取りをするようにしました。口コミコムで可視化されたお客様からの改善の声に対して、大きいことから小さいことまで優先順位をつけ、「いつまでに改善するか」を明確に決めて実行してもらう。放置されていたお声を、一つひとつ確実に改善のアクションに変えていく作業を繰り返しています。
返信業務の負担や質についてはどう変わりましたか?
柿迫氏:これまでは現場の裁量で返信していましたが、今は品質管理部で内容の精査を行っています。
特に厳しい評価をいただいた際の返信は、会社の姿勢を示す重要なものです。口コミコムのAI返信機能は精度が高く、機械的すぎない自然な文章案を出してくれるので、それをベースに現場と協力して真摯な回答を作成できるようになりました。
データが経営の投資判断を動かす
HOTEL SANSUI NAHAでは、アンケート機能を活用して大きな成果が出ていると伺いました。
柿迫氏:客室内に口コミコムのアンケートQRを設置しているのですが、月に700件もの回答が集まっています。一番の成果は、シャトルバスの路線拡大と車両変更ですね。
導入前は「空港とホテルの往復」のみの運行でしたが、アンケートで「国際通りに行きたい」「とまりん(港)まで出してほしい」という要望が非常に多く寄せられました。さらに「バスがハイエースで、人数が少なくて乗れない」という具体的な不満もデータとして積み上がったんです。
現場の定性的な報告ではなく、圧倒的なデータがあったと。
柿迫氏:全く違います。これまでは「多分そうだろう」という予測の域を出ませんでしたが、数百件のデータがあれば、経営陣も納得せざるを得ません。
このデータをもとに、すぐにマイクロバスへの大型化と路線の追加を決定しました。結果、お客様の満足度は劇的に上がっています。データがなければ、これほどスムーズな投資判断はできなかったはずです。
「名指しの評価」がスタッフの意識を変える
お客様の声が、スタッフのモチベーションにも繋がっているそうですね。
柿迫氏:アンケート項目の中に「接客が良かったスタッフ」を記載する欄を設けており、これを半期ごとに集計して表彰制度を運用しています。
全体の回答数の約2%と決して多くはありませんし、今はまだ手作業で一つひとつ名前を確認していて大変なのですが(笑)。でも、わざわざ名前を書いてくださるというのは、お客様が強烈に素敵な体験をされた証拠です。これを見逃さず全社に共有し、評価する仕組みを作ったことで、「次は自分の名前を書いてもらおう」という接客への前向きな姿勢が生まれ始めています。
今後は名前だけでなく、具体的な感動体験のエピソードも集約し、全社でナレッジ共有していこうと考えています。
目指すのは、自走する組織
最後に、品質管理部としての今後のゴールを教えてください。
柿迫氏:弊社のVisionは「自走する組織」です。
今は品質管理部がデータを集計して現場に「やってください」と働きかけていますが、最終的には、私たち品質管理部はチェックするだけの存在になればいいと思っています。
現場が自発的にデータを見て、改善していく状態ですね。
柿迫氏:そうです。ホテルは今後も増えていきます。本部がすべてを指示するのではなく、各現場が口コミコムを通じて自分たちの課題をリアルタイムで把握し、自ら改善に動く。そんな「自走」を支えるための強力な武器として、これからもツールを活用していきたいですね。