DXの本質は「楽をする」ためではなく、「おもてなし」への回帰にある。徹底した仕組み化で時間を創出し、人の力を最大化する ──AI時代の“人間回帰”による高付加価値戦略
お話を伺った方:北原様
大阪市内で「SARASA HOTELS」を展開する更紗ホテルズ(株式会社更紗ホテルズ)。同社は今、持続的な成長を見据え、団体客と個人客(FIT)の構成比を最適化し、ターゲット市場の多様性を高める戦略へと大きく舵を切りました。 この変革を支える土台として、取締役統括本部長の北原氏が断行しているのが「徹底的な仕組み化」です。 現状より「お客様に向き合う真の接遇時間を創出するため」にも、口コミ返信などの管理業務をどう圧縮し、スタッフの働き方を変えているのか。その独自のDX戦略と、口コミコム活用の裏側を伺いました。
【経営哲学】なぜ今、「仕組み化」なのか?
事務作業を1/3に圧縮し、残りを「お客様」と向き合う時間に
まず、北原様が掲げている「仕組み化」の目的について教えてください。
北原氏:
ホテル業界は「人が動いてこそ」の世界ですが、バックヤード業務に忙殺され、肝心のお客様への接客が疎かになっては本末転倒です。 私たちが目指しているのは、「これまで『10』かかっていた事務作業を、仕組み化によって『1/3』に圧縮すること」。ムダを無くし手間を減らす、これに尽きます。
浮いた時間は何に使うのでしょうか?
北原氏:
「本来あるべき接遇」「未来への投資」、そして「メンバーの給与(福利)還元」です。 DXやAIの導入は、決して楽をするためではありません。代替可能な作業はツールに任せ、スタッフには人間にしかできない「おもてなし」に全力を注いでほしい。生産性を高め、その対価として給与水準を引き上げ教育に投資をする。これは異業種の高収益企業に学んだ哲学ですが、DXの目的が「自分たちの豊かさ」に直結しているからこそ、現場も本気で取り組めると考えています。
【導入基準】意思なきツールは導入しない
「改善の可視化・民主化」と「ポータブルスキルの獲得」

多くのツールがある中で、口コミコムを選んだ決め手は何でしたか?
北原氏:
正直に申し上げれば、MEO対策や口コミ生成ツールなどの提案は受けていました。しかし、私たちは自分たちが本質的に「良い」と腹落ちしないものには、1円たりとも投資しないスタンスです。
その中で、口コミコムには納得感があったと。
北原氏:
大きな決め手が3つありました。 第一に、「改善の民主化」が可能であること。OTAごとのレビューデータが散在していると、分析は一部の管理職に限定されてしまいます。これを一元化し、現場スタッフ誰もが「あ、ここが評価されていないな」と直感的に気づける環境を作りたかったのです。
2つ目の理由は何でしょうか?
北原氏:
「業務の標準化」です。担当者によって返信の質や頻度にムラが出る「属人化」を解消し、誰が担当しても一定のクオリティを担保できる仕組みが必要でした。
そして、3つ目は?
北原氏:
最も重視したのが、「人による伴走支援」です。 担当の方が親身になって「どうすればMEOで勝てるか」「他社はどう活用しているか」という知見を共有し、伴走してくれる。 「ツールを売って終わり」ではなく、私たちの組織に「ポータブルスキル(持ち運び可能な能力)」を定着させてくれる。そんなパートナーシップを感じられたことが、最終的な決断を後押ししました。
【人材育成と組織変革】「足し算」ではなく「掛け算」の人材へ
共通言語が生む、国籍を超えたシナジー
現場への定着で工夫されていることはありますか?
北原氏:
社内ではよく「足し算」ではなく「掛け算」の人材になろう、と言っています。 自分一人で新しいツールやスキルを覚えたとしても、それはチームにとって「+1」でしかありません。 それを周囲に伝播させれば組織の力は何倍もの「掛け算」になります。つまり半学半教の精神です。
実際にスタッフの動きは変わりましたか?
北原氏:
変わりました。例えば、GoogleマップとSNSへの「一括同時投稿機能」を活用することで、単純作業の時間が消滅し、「どんな投稿ならお客様に喜んでいただけるか」というクリエイティブな思考時間が増えました。
楽しんでやれているのは素晴らしいですね。
北原氏:
ええ。インドネシア出身の新人スタッフも、この機能を使い楽しんで情報発信をしてくれています。 国籍や経験を問わず、ツールという「共通言語」があることで、自然と教え合う文化が醸成されている。属人化していた業務が、組織全体の資産へと変わりつつあります。
【戦略】ターゲットは「20カ国以上」
大手と競合せず、確実に選ばれるホテルへ
インバウンド戦略についてもお聞かせください。
北原氏:
収益性を最大化させるためには、団体客とFIT(個人旅行客)の構成比、その『ベストミックス』の追求が不可欠です。 しかし、ボリュームゾーンである中国や韓国市場だけで勝負を挑んでも、資本の論理で動く大手との消耗戦は避けられません。 そこで私たちが採るのが、ターゲットを約20カ国へ広げる『多国籍分散ポートフォリオ戦略』です
20カ国ですか。かなり多いですね。
北原氏:
ええ。中国・韓国・台湾などはもちろん重要ですが、それだけに依存するのはリスクがあります。 そこで、新たな国を含めた約20カ国をターゲットに設定し、それぞれの国からの集客を積み上げることで、特定の国に依存せず、かつ競合の少ない市場で確実に選ばれるホテルを目指しています。また、当社には13か国の出身スタッフがおり、皆が活躍できる場を作りたいという想いもあります。
そこで口コミコムがどう役立ちますか?
北原氏:
20カ国を相手にするとなると、言語の壁が立ちはだかります。人力で全ての国の言語に対応するのは不可能です。 そこで口コミコムを使って多言語対応を強化し、「どの国のターゲットに、何が刺さるのか」を国別に分析していきたいと考えています。 この広範囲なマーケティングを実行し、「大手が見落としている市場」を開拓していくための武器として、非常に期待しています。
【展望】「機能的価値」から「情緒的価値」への昇華
最後に、今後の展望をお聞かせください。
北原氏:
「部屋が広い」「駅から近い」といった機能的価値での競争は、いずれ限界を迎えます。 これからは「サラサだから泊まりたい」「スタッフの〇〇さんに会いたい」という情緒的価値で選ばれるホテルにならなければなりません。
そのためには、事務作業を極限まで減らし、そこで生まれた時間を「顧客理解」と「接遇の質の向上」に充てる。 私たちの経営戦略を実現するための“参謀役”として、これからも口コミコムには期待しています。